王様ホール

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今年印象に残った本~10の方

発端の記事

yamakinkin.hatenablog.com


 前回までのまとめ:現実(ノンフィクション)を0、ファンタジー(完全フィクション)を10として数直線を引くと6か7くらいの小説が好きな私だが、今年良かった本は0と10だった。
 
その0の方

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今日は10の方。ファンタジーとは言いましたが、キャラクター絵本です。

「すみっコぐらし そらいろのまいにち」よこみぞゆり 著

「良かった本」と言いましたが、良かったのかな……もしかしたら良くなかった方で印象に残ったかも。複雑な感想なんです。
 
幼稚園~小学生の女の子がいない方は「すみっコぐらし」自体ピンと来ない方もいると思います。
「すみっコぐらし」は、あのリラックマを擁するサンエックスのキャラクターです。すみっこにいるとなんか落ち着く、ちょっとネガティブだけどほっこりかわいいキャラクターたちです。

しろくま……寒がりで北から逃げてきた。
ねこ……恥ずかしがりやで気が弱く、食いしんぼう。体型を気にしている。
とんかつ……油っぽいから食べ残されたとんかつのはじっこ。
ぺんぎん?……自分がぺんぎんかどうか自信がない。昔は頭にお皿があったような気がする。
とかげ……実は恐竜(厳密には首長竜)の子どもだが、ばれるとつかまっちゃうのでとかげのふりをしている。

この子たちを「すみっコ」と言います。この5体がレギュラーメンバーです。
すみっコたちにはこのようにネガティブな背景があるので、色々悩んでる人も大丈夫だよ、みたいなやつなんだと思います。多分。
 
これだけなら、「ああそういう設定なのね」で済むんですけど、今回紹介する絵本は、すみっコたちがすみっこに集まってくるまでの経緯を描いた絵本で、これがまあ心に来るやつなんですよ。
 
公式ツイッターなどでオビが紹介されてたんだけど、みんなかなり深刻に悩んでいるようで、「これ絶対泣かせにくるやつだな」と思ったんです。私、泣かせにきたやつに泣かされるのってあまり好きじゃないので最初は買うかどうか迷ったんですが、結局すみっコの可愛さに負けて、買ってしまいました。
 
結果、泣いた。
 
負けるとわかってた勝負に挑んで負けた感じもする。
「ねこ」と「ぺんぎん?」の話が特に来た。だからこそ最初と最後に据えられてるのだ。作者は狙っているのだ。
そして「とんかつ」も出口がない悩みだった。

卑怯だわー。
疎外感とかコンプレックスとか劣等感とかを感じたことがある人は必ず心に響くと思う。そして、そういうのを感じたことのない人はほとんどいないことだろうと思う。
 
この本は、「障害や病気や外国出身の人やいじめられっ子や陰キャなんかのマイノリティの悩み」「マイノリティどうし傷を舐め合う話」みたいな野暮な解釈もできる。できるけどAmazonのレビューにはそういう野暮なのはなかったので良かった。……私が一番野暮だわ。
「みんなちがってみんないい」になっちゃうんだけど、作者の言いたいことは結局それなのかもしれない。
それならそれでいい。
 
だが、私はすみっコたちの過去を知ってしまったことによって、以前ほどすみっコたちを手放しでかわいがれなくなってしまった。かわいいんだけど。かわいいんだけど「辛い過去があったんだねぇ」と思うようになってしまった。
 
まあまあ面白い若手芸人さんなんかで、過去を暴いたら壮絶な生い立ちだった、みたいなの、ありますよね。それを知ってしまうと、今までみたいに手放しで面白がることができなくなりませんか?
それと同じことが私の中で起こってしまったんです。

この本、すみっコファンの心を掴めるの?掴まれる人は掴まれるけど、そうじゃない人には逆効果ってことはない?
 
と余計なことを考えさせられました。
自分でも余計だと思います。
 
立ち位置が微妙ではあるけれど、とにかく印象には残った本です。