王様ホール

考えたことや感じたことや起こったことを書きます。

今年印象に残った本~0の方

前回のノート

yamakinkin.hatenablog.com

前回のまとめ:現実(ノンフィクション)を0、ファンタジー(完全フィクション)を10として数直線を引くと6か7くらいの小説が好きな私だが、今年良かった本は0と10だった。
 
長々と前置きすみません。
今回ご紹介するのは0の方。ノンフィクション。

「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋 著
 
オビにも書いてあるんですが、「一粒の小麦から文明が生まれた」ですよ。そして一粒の小麦から貧富の差、格差社会が始まったのですよ。

農耕を始めるまでの人類は主に狩猟で生計を立てていたわけで、みんなで協力して獲物を狩ってました。肉は貯蔵できないから、たくさん獲れたときはみんなで分け合っていました。

しかし小麦は、たくさん取れた分は貯蔵できるんです。たくさん持ってる奴が偉いんです。それを「富」と言います。
そうすると人々は小麦をたくさん得るために農業をして働くようになります。それまでは食べるために狩りをしてれば良かったのに、「労働」という概念が生まれた。

はい、文明の始まり。

この本は他にも色々な作物にスポットを当て、私が思い至りもしなかったことに気づかせてくれます。
 
私が特に面白かったのは「イネ」「ダイズ」「ジャガイモ」の話。

「イネ」「ダイズ」といえば我々日本人のソウルフードです。イネは雨が多い日本の気候にめちゃめちゃ合った作物で、なんと連作できて収量が高い優れ物。私、これ読むまで気にも止めてなかったんだけど、連作障害(同じ種類の作物を同じ畑で次の年も作ると不具合が起こるやつ)が出ない作物ってそう多くないみたいです。イネすげえ。
イネ(米)は炭水化物だけじゃなくタンパク質も含んでますが、必須アミノ酸のリジンが足りないらしいです。
そのリジンを多く含むのがなんとダイズ。
すごくないですか?ご飯と味噌汁だけで生きていけるんですってよ日本人は。なにこれ運命?米とダイズの運命?
(そりゃ肉も魚も野菜も食べたいけど、必要最低限という意味合いで。)

あとジャガイモはヨーロッパを大きく動かした。
ドイツ人はジャガイモとソーセージばっかり食ってるイメージですが、ジャガイモは豚の餌にもなるのです。だからジャガイモを沢山作れば豚も飼えるしジャガイモ自体も食べられる。
あとジャガイモは肉と一緒に食べると美味しいので、肉食文化じゃなかった日本では始めあまり広まらなかったとか、そういう一口話もいちいち面白いです。
その地域に合った食文化は、その地域に根付いた作物によって作られるんですな。

他の作物の話もどれも面白いです。なぜ熱帯地方で香辛料が採れるのかといった科学的な話もあるし、経済を大きく動かした結果戦争に発展しちゃったやつもあるし、植物すごいな。
ていうか、「富」「経済」すなわち「文明」なんだなということがわかりましたよ。そこに植物の力が大いに働いていることも。
 
で、あとがきに書いてあった文言が凄いの。
人類は品種改良だとか何だとか言って植物を利用しているようだけど、植物の側が人間に品種改良させて種を存続しているのでは?植物が人間を利用しているのでは?と。

つまり、人類は小麦を発見したときから植物の奴隷なのではないか。食糧を得るために、植物のために働かされているのではないか。
 
いやあ目から鱗だね。こういう気付きをけっこう簡単に得られるんだから、読書ってやつはやめられないね。

ノンフィクションもいい。そう思わせてくれた本でした。
植物好きの旦那もドハマりしてました。
いい。