王様ホール

考えたことや感じたことや起こったことを書きます。

始まってないのに終わった関係

ここ何年か、毎朝の通勤時にすれ違う車があった。

私と同じ車種の色違いでナンバーがキリのいい数字だったので、何となく覚えてしまった。
私はただでさえ他人の車のナンバーを自然に覚えてしまう体質だし。

yamakinkin.hatenablog.com

 

最初は、ただ単に「私と同じ車種の色違いだなー、キリのいいナンバーだなー」と思っていただけだった。けれどほぼ毎日毎日すれ違うので、どんな人が乗っているのか気になり、ある日、運転席をチラと見てみた。普通っぽいおじさんが乗っていた。
どんな人が乗っていようと、毎日すれ違うだけの関係が変わるわけではない。万一気になる人が乗っていたとしても、車を下りて相手の車を止めるようなことはしない。ていうか、できない。交通量が多すぎる。

私と同じ車種の色違いに乗っているおじさんの車を意識し始めたら、毎朝「今日は会えるかな」と、対向車を意識してしまう。けっこうよくいる車種なので、おじさんと同じ色でナンバー違いの車にも会うことがある。その時は「例のおじさんじゃなかった……」と少しがっかりする。

意識し始めると、私の会社帰りにもすれ違うことに気づいた。
「通勤経路のある区間、完全に一致してるじゃ~ん!」と思って可笑しくなった。
おじさんがどこから来てどこに向かうのか、私は知らない。
けれども、毎朝毎夕すれ違っていると、少し愛着が湧いてくるものだ。おじさんは私の車のことを認識しているだろうかとも考える。

ここ何年も、おじさんと私の関係が変わることはなかった。私の、同じ車種で色違いの車に乗ってるおじさんへの感情は、「今日はいるかな」「いた」or「今日はいなかった」しか無かった。


しかし、別れは突然に訪れた。

4月に入ってから、おじさんの車を一度も見ていない。

おじさん、転勤・転職・退職などしたのかな。勤務時間が変わったのかな。もしくは、車を買い替えたのかも。

そもそも私にとっては「車種と色とナンバーを認識している」ということ以外何の関係もない知らない人だったし、おじさんの車とすれ違うことがなくなったからといって、私の人生には何の影響もない。

ただ、ちょっとだけ寂しい。それだけだ。