王様ホール

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郷土料理「ひき菜炒り」

タグ「ヤッセイ」……以前あった「ShortNote」というエッセイ投稿サービスにて期間限定で開催されていた、野菜に関するエッセイコンテストのために書いたもの。

 

福島県の郷土料理に「ひき菜炒り」というのがある。
食育の一環なのか、小学校や保育園の給食にも「ひき菜炒り」は登場する。どんなものか調べてみようと思っていたが、つい後回しになっていた。
 
夫が、物置に大根が丸々一本あることを思い出し、突然「ひき菜炒りを作る!」と言い出した。
おっ、ひき菜炒り!大根を使うのか?どんなものだろう!と思って話を聞くと、以下の通りだった。
・大根(と、人参と油揚げなど)を千切りにする。
・醤油ベースの味付けで甘辛く炒め煮にする。
 
あ、それのことでしたか。
今まで私、それと知らずに作ってたわ。夫いわく、当たり前に「ひき菜炒りだ」と思って食べていたらしい。
「ひき菜」というのは、大根や人参、ごぼうなどを千切りにしたものの総称だそうだ。

「ひき菜炒り」は、大根の大量消費にとても適している。
「ひき菜炒り」だけではなく、福島県の郷土料理には、野菜を大量消費できるものが多い。
 
・味噌かんぷら……新じゃがの小さいのを素揚げにし、甘味噌ダレで炒める。
・茄子炒り……茄子を甘味噌炒め。
・いか人参……スルメと人参を細く切って醤油ベースのタレに漬け込んだもの。
・芋煮……宮城や山形のが有名だが、福島にもある。里芋ごろごろ。
 
野菜の大量消費というより、「採れた野菜を美味しいうちに頂く」知恵かもしれない。
野菜は一定期間に沢山採れてしまう。沢山採れた野菜は、悪くならないうちに食べきりたい。だから沢山の野菜を一度で料理する。味付けは濃いめで、ある程度保存も効く。
福島県の郷土料理はそんな思想でできているのではないか。
と、県外出身の私はそう思った。

郷土料理は、その土地で採れたものを使った素朴な料理。そういう温かみだけではなく、沢山採れて余りがちな野菜をどうにかして食べようという必死さを感じる。なぜなら、私が野菜を沢山頂くと、そう思うからである。

夫が作ったひき菜炒りは、千切りと言うには太すぎる5mm角だったが、ガツンと濃い味が大根に滲みていた。
 
ごちそうさまでした。