王様ホール

考えたことや感じたことや起こったことを書きます。

話の温度~広義のオタク

私たち生産技術グループに、今年度入社した研究職の女の子が実習に来た。
私たちのグループは非常に層が薄いため、実質「私の元に」来た。
それならということで、私なりに私たちの扱っている材質のことを色々知ってもらおうと思い、大雑把ながら社内で扱っている主な材料をだいたい網羅する計画を立てた。
コンセプトは「こんなに色々いじる機会はなかなかないから、いろんな材料で遊ぼう」だ。
きっとすごく楽しい。主に私が。

実習に来る女の子は大学院を出てる子で、あんまし評判がよろしくない。
なんでも、年下の同期に対して横柄だというのだ。私も実習前に何回か話したことがあるが、「この子は他人との距離の取り方がおかしい」と思った。初対面なのに対等に(敬語ではあるが)ズバズバ来る。正直、ちょっと苦手意識を持ってしまった。そういうタイプ基本的に苦手なんで。
しかし、彼女は同期で唯一の大学院卒、他の同期の子は全員高卒なのである。こんな偏った採用ってあります?いくら「現場と研究所に人を入れたい」と思ったからってさ。この境遇に置かれたら院卒の子は完全アウェーだよ。みんな地元県民、彼女1人だけ他県民。そりゃ浮くわ。可哀想だ。

最初はちょっと苦手と思ってしまったが、私のところに実習に来るというのだから、彼女の挙動を観察した。その結果、いろいろあって、彼女はほぼ間違いなくオタクであろうと思うに至った。

だったらこっちのもん。

なぜなら、私もオタクみたいなもんだからだ。
オタクの定義は色々あると思うが、私の解釈では、狭義のオタクは「何かに入れ込んで周りが見えなくなってる人」、広義のオタクは「興味のバランスが悪い人=興味を持った分野はとことん研究するが興味のない分野はどうでも良く、一般的にみんなが興味を持っている分野に全く興味を示さないこともあるので特定の人としか話が合わない人」だ。

私はその広義のオタクに属する。入れ込む対象があれば即オタクだ。しかし、私はのめり込む対象があったら手放しでのめり込んでしまうことがわかっていて怖いので、どの分野にも敢えてあまり深入りしてこなかった。結果、「ちょっと狭くちょっと深い半端オタク」だ。

実習に来る女の子は読み通りガチオタだった。何オタかは聞いてもわからないので詳しくは聞いてないけど、ジャンルはこの際どうでもいいのだ。私には過去にガチオタの友達がいて、その子はその友達にタイプがそっくりで、私自身も広義のオタクで、オタクの扱い方はわかっているからだ。

オタクというやつはキャラを固めてくる。無意識かもしれない。「私ってこういう人なんですよ~」という話をよくしてくる。相手の気を引けると思われる代表的な面白エピソードや失敗エピソードを話してくる。ややイタい奴だが、私も過去にやってた。当時の私の方がよっぽどイタかったと思う。立ち位置確認作業なんだと思う。
気に障ることは無い。なぜなら私は彼女より20歳くらいも年上なのだ。娘であってもおかしくないのだ。大人の余裕で受け流す。
なんなら私も「私の場合はこうだな」で微妙にマウントを取りながら類似エピソードを話して、打ち解けていく。しかし大学・大学院卒オタクに免疫がない人はここで辟易するんだろう。

そんでこれ重要なんだけど、最低限の社会生活を送ることができるレベルのオタク同士は、ジャンル関係なく話が弾む。ものごとに対する向き合い方が同じだからだ。例えば彼女がAというゲームの話をした際、私はBというゲームの似てるところを挙げて「ゲーム全般」で話を合わせることができる。彼女がアイドルのミュージカルの話をしたら、私がメタルのライヴの話をして合わせることができる。

それは言うならば話の温度。オタクかどうかも関係ない話。
何の話題かは重要ではなく、テンションやフィーリングが合えば会話は進むのだ。

そして、私には現在、会社で温度の合う話し相手がいない。
家では旦那と私とで頭のレベルがほぼ同じ(しかし趣味はまるで違う)で何の不具合もないけど、会社では私と似た人がいない。過去にはいたが、退職や異動でいなくなってしまった。

そんな中に舞い込んで来たガチオタ実習生である。
20歳ほども違うけど、同じレベルで話ができて楽しい。彼女も臆することなくガンガン来るからね。
作業中に雑談して楽しいのっていつぶりだろう。昔はふざけすぎるぐらいふざけてたけど、あの頃が懐かしいな。

仕事は楽しい方がいいよね。モチベーションも上がるしね。
もちろん押さえるところは押さえるのが前提だけど、雑談で仲良くなった方が人脈作りという点でもいいことだし、今後の仕事にも絶対生きるよね。

実習生には、期間中いろんな意味で楽しんで行ってほしいものです。