王様ホール

考えたことや感じたことや起こったことを書きます。

見ているようで見えていない話

通勤経路に歯科医院がある。毎日毎日、朝と夕方に、その歯科医院の青い看板を見ていた。

歯科医院の名前は、「鈴木歯科医院(仮)」みたいな感じの、おそらく院長の苗字をそのままつけた、何ら特徴のないものだった。
それが先週から突然、「マハロ歯科医院(仮)」みたいな名前に変わっていた。看板も青から緑色に変更されており、歯がモチーフだったロゴマークは南国風のマークに差し変わっていた。

急にどうした。そしてなぜその名前……というよりも、
前の名前、何だったっけ??

毎朝毎夕、10年以上も見続けていたのに、変更前の名前が全く思い出せないのだ。

かかりつけでもなければ今後かかる予定もない、隣町の、全く興味のない歯科医院なので、仕方ないといえば仕方ない。でも、10年以上も毎日見てたはずなのに全く思い出せないなんてことある?
ロゴマークが歯だったことは覚えてるのに。青い看板で、何ら特徴のない名前がゴシック体で表示されていて、下にローマ字表記で「〇〇〇〇 dental clinic」って書かれてたのも覚えてるのに。

今日、その歯科医院がある町の人に答えを聞くことができた。答えを聞いたら「ああああーーーー!」ってなった。聞いたら完全に思い出した。
例えば「角田」という漢字だったら「かくた」とも「つのだ」とも「すみだ」とも読めると思うんだけど、その歯科医院の名前も、読みが何パターンかあるタイプだった。私は最初パターン1だと思ってて、ある日看板に書かれているローマ字表記を読んだらパターン2だったと知ったやつだ。

そういう認識も持ってたはずなのに、急に名前が変わったら、前の名前を全く思い出せないでやんの。

人間の記憶なんて実に頼りにならないもんですね。見ているようで実は何も見えていない。
あ、「人間の記憶は」だとさすがに主語がデカすぎるかな。

「私の記憶は実にポンコツです」

 

これさあ、「最初からマハロ(仮)だったよ」という世界線もある気がしない?

「マハロ歯科医院(仮)」の看板を見た私が「何だこれ、変なの」「そういえば変更前の名前って何だったっけ」と思って、その歯科がある町の人に「最近マハロ(仮)に名前が変わった歯医者さん、ありますよね」って聞いたら、「え?あそこは私が子どもの頃からずっとマハロ(仮)だったよ?」という世界線
私だけが変更前の「角田と書いてかくただと思ったらつのだだった歯科医院(仮)」の記憶を持っているのに、他のみんなは「あそこはマハロ(仮)以外ありえない」と思ってる世界線。「そんな……じゃあ私の記憶は?つのだ(仮)の記憶は何なの?」という世界線

そうだったら楽しいなーフフフ、という妄想をしながら会社に向かって車を走らせていたら、路肩の、歩道の縁石のところに、コキアがいくつかぽんぽんと生えていて、中途半端に赤紫に色づいてたんですよ。
(参考画像・他所から拝借したもの)

この時期、コキアはいい感じに色づきますね。
でも私が見た通勤経路の縁石のコキアには、今日初めて気がつきました。
多分、コキアは何年も前からそこに生えてたんですよ。昨日今日突然出現したわけではありません。なんなら昨日もそこを通ったので、見たはずです。
なのに全く記憶にないの、おかしくないですか。コキアが色づく「この時期」は、何年も繰り返し訪れているというのに。

はい。

「私の記憶は実にポンコツです」

 

生活のストレス(生きてるだけで自動的に蓄積されるストレス)と酒で脳味噌やられてるんかな。