王様ホール

考えたことや感じたことや起こったことを書きます。

しつこく たまごやきの話(実質 後編)

前回あれだけ書いたのに、まだ語り足りないことがあります。
前回のはこちら

今回の目次

 4.夫のおかあさんのたまごやき
 5.プレイスタイルの違い

 

4.夫のおかあさんのたまごやき

 前回、たまごやきの甘さを、ランク1:あま~い から ランク4:あんまり甘くない(だし巻きなど) の4段階に分けました。
 私の母が作っていて私が今自分で作っているのは、ランク3:ほんのり甘い。私の高校時代の下宿のおばさんが作っていたたまごやきは、ランク1:あま~い。私は、そのランク1を好きになることはありませんでした。だからといってランク1が悪いと言ってるわけじゃないんですよ。各家庭にそれぞれスタイルがあり、私の実家と下宿のおばさんのスタイルが異なっていたから私がそれをなかなか受け入れられなかっただけの話です。

 夫と、たまごやきの話をする機会がありました。
 私が下宿のおばさんのことを思い出しながら「砂糖のかたまりか!ってぐらい甘いたまごやき作る家もあるよねー」と言ったところ、夫が「俺んちのもそうだったよ」と言いました。
 なんと。
 夫の実家のたまごやきがランク1だったなんて。

 おそるおそる、「え、じゃあ私が作る、ほんのりしか甘くないたまごやきは美味しくない……」と聞いてみました。
 「いや、あれはあれで美味しいよ。(私)の実家に行ったときにお母さんのたまごやき食べたらおんなじ感じだったから、ああ、これがこの家の味なんだな、そういうもんなんだな、と思った」との答え。
 良かった。
 「じゃあ私もたまに、あま~いたまごやき作ろうか?」と持ちかけたところ、「別にいい」との返答だった。
 良かった。私はあれを上手に作る自信がない。砂糖が多いとすぐ焦げちゃうからね。今でさえ、途中でなんか他の作業をしようとしてたまに焦がしちゃってるのに。

 夫が語ってくれた、お母さんのたまごやきの思い出話がある。

 夫が子どもの頃のある日、お弁当にたまごやきが入っていた。ひとくち食べてみると、「塩のかたまりか!」っていうくらいしょっぱかったらしい。どうやら、お母さんが砂糖と塩の分量を逆にしてしまったようだ。
 夫の実家は大変貧しく、お母さんは苦労人だった。そんなお母さんが作ったものは、たとえ失敗作であろうと、決して残すわけにはいかない。せっかく買った食べ物を、捨てることはできない。
 そう思った夫は、塩のかたまりのたまごやきを、無理やり全部食べたらしい。
 ちなみに夫の弟と妹は、「こんなん食べられない」と、普通に残したらしい。うん。

 夫の、お母さんに対する思いと食べ物を無駄にしない思いはとても立派だ。
 だけど、ランク1:あま~い のたまごやきに使う砂糖の量ってどのくらいなのよ。卵3個に対して大さじ3とか4とか?きっとそのくらい砂糖が入ってる。そのくらい入れないとあんなに甘くならないだろう。それが全部塩に置き換わったとなると…………。
 悪いけど、客観的に見て、食べない方が賢明なレベルだと思った。夫の弟と妹が正しい。体おかしくなる。

 このおはなしは、私がランク1:あま~い のたまごやきの甘さを知っているといないとで、捉え方が違ってくる。
 もし私がランク3:ほんのり甘い のたまごやきしか知らなかったら、「うわーずいぶんしょっぱいたまごやきだねー(阿呆面)」としか感じられなかっただろう。でも私は下宿のおばさんのおかげで、前もってランク1を知っていた。ランク1のたまごやきに使われる砂糖の量をなんとなーくでも想像できた。
 だから、夫は無茶をしたものだと思う。たまごやきを食べなかった夫の弟と妹が正しいと思う。

 

5.プレイスタイルの違い

 園児時代の娘が、「Rちゃんのおべんとうのたまごやきは、ぜんぜんこげてないんだよー」と教えてくれたことがある。
 私のたまごやきは、いつも少し焦げ目がついている。母のも少し焦げ目がついていた。だからそれが「正」だと思っていた。

 単なる焼き温度の違いかもしれない。
 しかし、私には、推測できることがある。

 Rちゃんの家のたまごやきは、おそらく、ランク1:あま~い だ。
 ランク1:あま~い は、砂糖が多いので、うっかりするとすぐ焦げてしまう。だから、弱火でじっくり焼かなくてはいけない。結果、黄色いきれいなたまごやきが焼き上がる。
 なんでそう思ったかというと、下宿のおばさんのランク1たまごやきが、いつも全く焦げ目のない、黄色いたまごやきだったからだ。常にランク1を作る人は、焦げないように気を付けるのだろう。

 うちみたいなランク3:ほんのり甘い だと、むしろ中火にする。オムレツみたいに卵液を少しかき混ぜながら火を入れて、巻く。結果、少し焦げ目のついた香ばしいたまごやきに仕上がる。

 そういう知識を持っていた私は、当時園児だった娘にこう言った。
 「Rちゃんちのたまごやきは、多分、すごくあま~いタイプのやつだと思う。砂糖が多いとすぐ焦げるから、焦がさないように作ってるんだよ。うちのはあんまり甘くないでしょ。うちのとはプレイスタイルが違うんだよ」
 娘は「ふーん」みたいに言ってたと思う。園児にプレイスタイルが理解できたかどうかはわからないが、違うもんだということはわかってもらえただろう。多分。

 私の料理が下手だから焦がしてるんだと思われたくなくて、ついプレイスタイルなんて言ってしまった。園児に。

 ちなみにRちゃんは小学生になった今でも娘の同級生であるが、うちの娘とは何から何まで逆属性のキャラクターである。おそらくお互い嫌い合っている。
 付き合い自体は全同級生の中で一番長いのにね。しょうがないね。こっちこそプレイスタイルが違っているが、たまごやきの話とは関係ない。

 

 たまごやきの話は、今回で完結します。