「住んでる街の観光地ってわざわざ行かないよね。卒業前に観光しよう!」
という親友の発案で、私たちは、函館元町方面に出かけた。
普段ショッピング等でさんざん利用していたバスや路面電車でさえエキゾチックに感じられた。今日、私たちは観光客なのだ。
函館山の山頂から街を見下ろした。夜景で有名な街だが、昼の景色もまた違った趣がある。
旧函館区公会堂を見学した後、カール・レイモンのお店でソーセージを食べた。
ハリストス正教会では、親友が「キリスト教の絵画が怖い」と言った。畏れを感じるのだと。彼女は外語大を卒業してから今もずっとイギリスに住んでいる。彼女の精神はきっと、生まれたときからずっと日本の外にあったのだ。
性格も性質も正反対の私たちが、函館の高校でたまたま出会い、3年間を一緒に過ごした。
私が彼女を思い出すときには、別々の道を歩き出す直前に行ったこの観光が、必ず一緒に思い出されるのである。
※2022.8.3追記
これはこの年の「旅する日本語」エッセイコンテストに出したやつです。コンテストのテーマに合ってなかったのは自分でもわかっていましたが、どうしても書かずにいられなくて無理やりテーマとこじつけました。ちゃんとこじつけられませんでしたが。