王様ホール

考えたことや感じたことや起こったことを書きます。

鼻からキャラメル

タイトルとは裏腹に、少し悩んでることを書きますね。

こないだ、何らかの理由で息子がスネていたときの話。
床に落ちてるものを片付けようとしたら、息子が以前作って大切にしてたけど今はもう顧みられなくなった折り紙作品が落ちていた。
私はスネている息子に、「これ捨てる?捨てない?」と聞いた。
スネているときの息子は、舌っ足らずなしゃべり方になる。普段ははっきりとしゃべる。
息子は「ふえぇる」みたいなことを言った。
私は「ふえぇる?はっきり言って。捨てるの?捨てないの?」と聞き直した。
息子は「ふへぇる!」と言った。
私は「ふへぇる?え、何?捨てるの?捨てないの?」と、また聞き直した。
これを3~4回繰り返した。
息子はついに「すてる」と言った。はっきり息子の口から「捨てる」が聞こえたので、私は折り紙を捨てた。

このやり取りを夫に注意された。
1回目の「ふえぇる」は夫が聞いても「はっきり聞こえない」判定だったけども、2回目以降は「すてる」だとわかってやれよ、ということだった。
息子に対しては「お母さんは行間が読めないんだからはっきり言った方がいいよ」と言っていた。心外だな。行間は読めるけど、読まない方がいい場合とか読んではいけない場合があるから、敢えて読まないだけなのに。

多分、普通は「ふえぇる」を「捨てる」と捉えるべきなんだろう。「普通」はな。

私の言い分は以下の通りだ。
「ふえぇる」は「ふえぇる」としか聞こえない以上、「捨てる」とは言っていない可能性もある。
「捨てるの?捨てないの?」という問いかけに対して「ふえぇる」なんだから、「る」がついてるんだから、普通に考えたら「捨てる」と言ってるんだろうけど、息子が問いかけを無視して何か別のことを言っている可能性もある。
つまり、普通じゃない可能性があるから、私は息子の口からはっきり「捨てる」という意思を確認したいのだ。
息子は普段ならはっきり「すてる」と発音できる。これが1歳2歳の子ではっきりしゃべれないのであれば、私も息子の口からはっきりとした「すてる」を聞こうとはしない。
あくまで息子の意思の確認なのだ。息子自身の口から明確な捨てる意思が確認できない以上は、折り紙を捨てるわけにはいかない。「すてるって言ってないのに何で捨てたの?」と言われたくないからだ。私にとって、「ふえぇる」は「すてる」ではないからだ。

夫にも可能性の話はしたんだけど、こういうのは理解できないようだ。「普通」の範疇で生きてる人だからだ。今まで自分が生きてきた成功ルートで物事を見ているようだ。自分の「普通」が世間の「普通」だと思っており、それが正しいと思ってる人の考え方だ。
それは決して悪いことではない。「普通」の人たちの中ではそれが「普通」の考え方なんだろう。

「普通」はいいな。「普通」は羨ましい。
とか言ってると、まるで私が、自分が「異常」とか「非凡」だとか思い込んで気取ってる人みたいだが、そうではないのだ。30代前半くらいまでは、私はずっと、自分のことを「普通より下」の人間だと思っていた。だから「普通の人」のレベルに上がりたかった。当時はよく「普通の人になりたい」って言ってた。
私が考える「普通の人」は、あんまりコンプレックスが無く、あっても「太ももが太い」とか「交際が長続きしない」とか「短距離走が苦手」とかだ。全体が太い人や交際自体を行ったことがない人や長距離も短距離もビリの人間にとっては羨ましい悩みばっかりで、本気のコンプレクサー(造語)とは一線を画したハイレベルの人間だったのだ。

話を戻そう。
私は「ふえぇる」と「すてる」が同一の概念だとは思えない。私の脳に「すてる」というはっきりした言葉が届くまでは、息子が「すてる」意思を表明したことにならない。だから何度でも確認する。

職業病かもしれない。自然科学の分野では、「普通はこうだから」という固定観念に捉われるとデータを正しく読むことができないので、得られたデータこそが真実として、あらゆる可能性を考えなければならない。データが疑わしいとなったら再現試験を行い、データの妥当性を確認する。

私が息子にやってたことは、まさにこれだった。
もう少し、普通の人(私よりハイレベルの人)に寄せて、息子の言うことを忖度すべきなんだろうか。
息子が捨てる/捨てないとは別のことを言っている可能性は、考えなくてもいいの?
私がおかしいの?

やべえ。タイトルの話に行く前に結構な長文書いちゃった。もう少しだけお付き合い下さい。

この日の夜、またなんかの理由でスネていた息子とお風呂に入った。グズグズだった。
息子の髪の毛を洗っていた際、半泣きの息子が、「なんかいっぱいはらめるでる」と言った。私にはそう聞こえた。
「はらめる?」と、私は聞き直した。何回か聞き直した。
「はらめる!はなめる!はなめず!」と、息子の答えが焦点を結び始めた。
「ああ、はなみず!」と、私は理解した。
「そう!はなみず!……なんで鼻からキャラメル出るの!!」と息子は怒り、そして笑い出した。平常状態ならこのくらいしゃべれる息子なのだ。
私の「はらめる?」を、息子は「キャラメル」と聞き取ったようだ。
息子なりに、鼻からキャラメルがいっぱい出る様子を想像しておかしくなったのだろう、その後は総じて機嫌が良くなった。
私の察しの悪さ(というのはなんか違うが夫にはそう取れるらしい)が、息子の笑いにつながった稀有な例だった。

私には、聞こえた言葉以外の解釈をすることの方が、相手に対して失礼だと思えるのです。相手はそんなつもりで言ったんじゃないのに別の解釈をされるのって、おかしくないですか?
だったら最初からはっきり言えよと思うのです。
してみると私はやっぱり察しが悪いのかもしれない。

こないだTwitterで見たやつ

科学はこうなんですよ。データは嘘をつきません。